前回は、「2024年度購買管理システムにまつわる企画を考える」ということで次年度の購買管理システムに関する企画について取り上げました。今回は、企画を実際のプロジェクトとして進めるにあたり、最初の一歩としてキックオフについて考えてみようと思います。
キックオフへの準備: 目標設定とチームビルディング
プロジェクトの目的の設定・共有
プロジェクトに対する認識はプロジェクトメンバー間での個人差があり、方向性が異なると業務効率も低下し、対立が生まれやすくなる傾向があります。成功への第一歩は、キックオフミーティングでプロジェクトの概要や目的、方向性、ゴールなどを共有することです。キックオフミーティングにて、プロジェクトについての認識の共有を進めることでズレが生じにくくなります。認識齟齬がなくなれば業務をスムーズに進められ、業務効率アップにつながります。また、初めにプロジェクトメンバー同士が顔合わせをしておくことで、安心感と一体感が得られます。特に社外とも連携を取りながらプロジェクトを進める場合、相手の顔も名前も分からない状態で仕事をするのは不安になるものです。キックオフミーティングでお互いの顔を知っていると安心してコミュニケーションができ、信頼関係も生まれやすくなります。その他、キックオフミーティングでプロジェクトは始まるという実感を持たせることで、メンバーのモチベーションの向上にも効果があります。
プロジェクトチームの構成と役割分担
目的が定まったら、プロジェクトチームの構成と役割分担に進みます。ここでは、各メンバーの強みを活かし、かつプロジェクトの要求に合わせた人材配置を心がける必要があります。役割は、明確な責任と期待される成果に基づいて割り当てられるべきです。後述で取り上げますが、ステアリングコミッティも含め購買に関するプロジェクトでは複数の部門にわたっての見識が求められます。
評価軸の設定
この段階では、取捨選択の評価軸を設けることも重要です。これにより、プロジェクトの進行中に遭遇する予期せぬ選択肢や意思決定に迅速かつ効果的に対応できます。チームビルディングの過程では、信頼関係構築のための活動も忘れてはなりません。信頼があれば、コミュニケーションがスムーズになり、課題解決が迅速に行えるようになります。
キックオフへの準備段階を通じて、プロジェクトメンバー間で目標が共有され、役割が明確になることで、プロジェクトは成功への道を着実に歩み始めるのです。
用語の統一とコミュニケーション
プロジェクト内の用語統一とその重要性
プロジェクトを取り巻く環境は多岐にわたる専門知識と多様なステークホルダーで構成されています。このような状況で、用語の統一は極めて重要です。共通の語彙を持つことは、誤解を防ぎ、効率的な意思疎通を実現します。たとえば、「コスト削減」という言葉が、ある部門では「予算の削減」を意味する一方で、別の部門では「無駄の排除」を指す場合、混乱は避けられません。用語の統一は、このような混乱を未然に防ぎ、プロジェクトのスムーズな運営を支援するために不可欠です。
効果的なコミュニケーションのためのヒント
効果的なコミュニケーションを確保するためには、明確なコミュニケーション方針の策定も欠かせません。これには、頻繁な進捗報告の開催、チーム内外での情報共有のプラットフォームの選定、そして、フィードバックと進捗報告のルーチンを定めることが含まれます。さらに、部門の垣根を越えた誠実なコミュニケーションを奨励し、チームメンバーが意見や懸念を自由に表現できる文化を作り上げることも重要です。
用語を統一し、効果的にコミュニケーションを行うことで、プロジェクトは目標に向かって効率よく進行し、チームワークは強化されます。この二つの要素は、プロジェクト成功のための基盤を形成します。
会議体の設定
ステアリングコミッティの設置
会議体の設定はプロジェクト管理の中核をなす要素であり、特にステアリングコミッティの設置は、方向性を定め、実行力を確保するために不可欠です。特に社内の広範な部門が絡む購買活動については、「聞いてない」「もっと前もって言ってくれないと」というような事態が発生しがちです。そのようなプロジェクト進行上のリスクを減らすためにも、ステアリングコミッティにはそのメンバーには経営層や主要なステークホルダーが含まれるべきで、プロジェクトの目標とビジネス戦略を一致させる彼らの視点が、成功への鍵となります。
効果的な課題管理のやり方
各会議体では課題管理を行うこととなりますが、効果的な課題管理のためには、全ての問題点が迅速に特定され、適切な人に割り当てられ、優先順位付けされる必要があります。課題は透明性を持って管理されるべきで、定期的な更新とレビューを通じて、進捗が追跡されます。問題解決のための具体的なアクションプランを持ち、期限内に解決することが重要です。
課題管理ツールなど世の中には数多くの仕組み化されたサービスなどがありますが、課題管理では課題の担当者とは別に、課題管理の担当者を明確にセットすることをお勧めしています。
会議体の設定とその運営
会議体の設定とその運営にあたっては、明確な目的とアジェンダを設定することが必須です。会議の目的が達成されるように、各会議の目的を事前に定め、参加者に共有することが効果的です。会議は、単に情報を共有する場ではなく、意思決定や問題解決のための活動的な場でなければなりません。そのためには、定期的なスケジューリングとともに、各会議の効率性を高めるための明確な規則やプロトコルの設定が役立ちます。
これらのプロセスを通じて、会議はプロジェクトの達成へ向けての動力となり、課題の迅速な特定と解決を促進する機会となるでしょう。ステアリングコミッティの指導の下、効果的な課題管理と会議体の運営がプロジェクト成功への道を切り開きます。
プロジェクトスケジューリングの秘訣
スケジュールのバッファーの考え方とリスク管理
プロジェクトスケジューリングは、期限内に目標を達成するための計画ですが、予期せぬ障害が発生することは避けられません。そのため、スケジュールにバッファーを設けることが重要です。バッファーは、想定外の出来事や遅延に柔軟に対応するための「安全マージン」であり、ストレスを軽減し、リスクを管理する手段です。
バッファーの設定には、プロジェクトの複雑性や不確実性を考慮する必要があります。また、バッファーは各タスクやマイルストーンだけでなく、プロジェクト全体にわたって組み込むべきです。このプロセスには、過去のプロジェクトのデータ分析やリスク評価が役立ちます。
バッファーの設定の仕方はいろいろやり方が存在しますが、報告および了承がされるという点で会議体の開催間隔を1つの単位で考えてみるのはどうでしょうか。コミュニケーションが手戻りないし、検討や確認漏れなどがあると最低でもこの単位時間だけ遅延することになります。また、そのことをプロジェクトメンバー全員が認識することで「プロジェクトを確実に前に進める」という意識を醸成していきましょう。
関連部門との協働の課題
購買管理システムの導入や改善プロジェクトにおいては、関連部門や購買管理システムベンダーとの協働がプロジェクトの成否を大きく左右します。各部門間でのコミュニケーションの難しさや意思決定の遅延は、プロジェクトを複雑化させる主な課題です。これらを克服するためには、各関連部門との関係を強化し、一貫した目的意識を共有することが重要です。
購買管理システムベンダーとのリレーション構築
ベンダーとのリレーション構築においては、透明性の高いコミュニケーションと相互の信頼が鍵となります。定期的なミーティングの設定、契約のクリアな定義、そして目標に対する共同のコミットメントが、良好な関係を築くためには不可欠です。情報システムに詳しいメンバーがいたとしても、特定の購買管理システムの知識が十分にあるかはまた別であるため、最新のアップデート情報なども含めてベンダーとの協力体制はあるにこしたことはありません。ベンダーがプロジェクトのビジョンと戦略を理解し、その成功に貢献するパートナーとして機能するようにしていきましょう。
外部PMOの活用
プロジェクト管理では、PMO(プロジェクト管理オフィス)の設置が一般的になりつつあります。PMOに適当な人材をアサインすることは、専門知識の補完とプロジェクト管理の効率化に寄与しますが、安易に外部PMOに頼るプロジェクト運営も考えものです。先のベンダーの点でも触れましたが、数多くの部門の事情の他、情報システム、特に特定の購買管理システムに関する知識などが必要となる中で、単に“プロジェクト管理”・“PMO経験”というだけでPMOとしてアサインしても効果的に機能させるのは難しいように思われます。
購買管理システム導入や購買活動の改善などのプロジェクトにてPMOを設置する場合、PMOのメンバーには“社内情勢に詳しい方(リレーションを取れる方)”か“導入・利用している購買管理システムへの知見がある方”の少なくとも片方は満たしていることが望ましいでしょう。
プロジェクトキックオフとして、用語の統一、会議体の設定、そしてプロジェクトスケジューリングと関連部門の協働に至るまで、本メルマガでは成功に向けた実践的なステップをご紹介しました。これらの取り組みを通じて、プロジェクトは効率的に進められ、目標達成へと繋がる強固な基盤が築かれます。