部門横断の整合という関門を超えて、
全社省力化プロジェクトとともに進めた間接購買改革
阿弥 伶奈 様しげる工業株式会社
入社8年目。入社より一貫してIT統括購買統括部に所属。様々なデータの処理、業務改善の提案、システム導入の事務局やサポートを担当。
自動車メーカー向けのインストルメントパネルなど、自動車内装部品の組立や樹脂成形製品を主力とするしげる工業株式会社。専任の購買部門を持たず、一般購買は総務、直材は調達、設備・金型は生産技術と、3つの部門が役割を分担して購買を担っていましたが、二重承認や紙の運用、上長不在による承認停滞といった課題が累積していました。
2024年に発足した全社業務整流化プロジェクトとペーパーレス化推進を起点に、「パーチェスワンクラウド」の導入に踏み切った同社。IT統括室で改革を主導した阿弥様に、購買改革の舞台裏を伺いました。
ペーパーレスの合流
最大のヤマ場
FAX対応
Chapter 1改革に踏み切った背景
ーー まず、IT統括室における阿弥様の役割と業務内容についてお聞かせください。
しげる工業株式会社のIT統括室 経営情報システム係に所属しており、入社以来一貫してIT統括の部門に在籍しています。日々の情報処理や取引先データの処理、業務改善の提案、システム導入の事務局やサポートが主な業務です。
最近はバックオフィスの皆さんからの困りごとや相談を受け、業務改善の提案やシステム化を進めていくような役割が中心となっています。IT部門は社内の様々な部門のシステムに精通する必要があるため、全社をフラットに見渡せる立場で日々業務に取り組んでいます。
ーー 従来の購買・調達部門の体制はどのようなものでしたか。
弊社には事務用品などを購入する専任の「一般購買部」のような部署がなく、これまでは総務部門がその役割を担っていました。一方で、製造に使う部品や材料(直材)は調達部、設備や金型は生産技術部門が、見積もりから発注・手配までを一貫して行うなど、大きく3つの部門で分担して購買を行っていました。
間接材の規模としては、カタログ関係が月800万〜900万円ほど、見積もり関係が月4億円前後にのぼり、取引先は100〜200社ほどに達します。コストを抑えるのが難しい時代だからこそ、この膨大な購買データをしっかり分析していくことがキーになると感じていました。
ーー 「パーチェスワンクラウド」の導入前、どのような課題を抱えていたのでしょうか。
間接購買に関しては、総務部門が手配を代行していましたが、自社製の電子承認システムでの申請、総務側での発注書作成、届いた請求書の処理申請など、業務が二重に走っている状態でした。総務で選定できない細かい仕様のものがあると、調べる手間やマニュアル作業も多く発生していました。
また、数億円規模にもなる設備や金型の購買を行う生産技術部門では、見積取得をメールやFAX、電話で行っており、紙の注文書にハンコを押して郵送するという運用でした。そのため、「上長不在で承認が停滞する」「郵送によるリードタイムがかかる」「月末の出張で検収が遅れる」「紙の受領書の紛失」といったコストとリードタイムの課題が累積していました。エビデンスとしての保管場所や、割高な専用用紙の手配コストも問題視されていました。
Chapter 2業務整流化とペーパーレス化を両輪に
ーー システムの導入を本格的に検討し始めたきっかけを教えてください。
2024年に発足した全社的な「業務整流化プロジェクト」が大きな起点となりました。バックオフィス業務の複雑化が課題となる中で、特に購買の業務プロセスは複雑で二重承認などの無駄が多いため、速やかに改善すべきだという結論に至りました。
同時に、請求書の保管コスト削減を目指す「ペーパーレス化」の動きも活発化しており、業務整流化とペーパーレス化の両輪から、購買業務プロセスの刷新へと動き出しました。
ーー 検討にあたり、他社製品・サービスとの比較はされましたか。最終的な決め手も併せてお聞かせください。
外資系のサービスも1社比較検討していました。比較のポイントは「運用のしやすさ」「UIの見やすさ」「運用コスト」です。外資系のサービスは機能が複雑な印象があり、「現場が本当に使い続けられるか」という運用面で不安が残りました。
最終的な決め手となったのは、パーチェスワンクラウドの圧倒的な「使い勝手の良さ」です。まるで普段利用している大手のコンシューマー向けECサイトのようにお買い物ができ、マニュアルがなくても直感的に操作できます。特にカタログ機能は非常に使い勝手が良く、画面のレスポンスも早いため、ストレスなく利用できる点が魅力でした。
Chapter 3導入の舞台裏 — 部門間整合という最大のヤマ場
ーー 導入プロジェクトはどのように進められましたか。
検討の結果、機能を「カタログ購買」と「見積購買」の2段階に分け、全社一斉に展開する方針をとりました。
ステップ1:カタログ購買の開放
すでにセットされている大手ECサイトなどをそのまま活用し、総務部門が対応していた取引先も少数だったため、細かな説明会を重ねてスムーズに開放できました。ユーザーにスマホでお買い物をするような感覚で使ってもらい、まずはシステムの使用感をつかんでもらう狙いもありました。
ステップ2:見積購買の開放
見積購買は登録社数が全体で500〜600社におよび、調達部門との整合にも時間を要するため、カタログ購買の開放から1ヶ月ほど間を空けた4月1日に全社一斉に機能を開放しました。
ーー プロジェクトを進める中で、最も苦労された点はどこでしょうか。
やはり「横の部門間・組織間の整合」です。カタログ購買は総務部門とのやり取りだけで進められましたが、見積購買になると生産技術部門や調達部門、そして多くの取引先が絡んできます。部門ごとにシステム導入に対するスタンスが異なっていたため、展開方法の検討や各部門との話し合いには多くの時間を費やしました。
特に製造業は地域密着の側面が強く、仕組みが変わったからといって簡単に取引を打ち切るわけにはいきません。生産技術部門の取引先には、一人で経営されているような小さな町工場もあります。パーチェスワンクラウドには、そうしたシステム導入が難しい取引先に対しても「FAX注文機能」や「ダイレクト発注機能」など、手が行き届く仕組みが標準で備わっていたため、取引先を切ることなくスムーズに移行でき、非常に助かりました。
また、弊社の細かい要望に対して、パーチェスワンの営業・技術チームが手厚く打ち合わせの場を設け、認識のすり合わせに粘り強く付き合ってくれたことも、プロジェクトを成功に導いた大きな要因だと感じています。
Chapter 4現場の反応と、隠れた効果
ーー 導入後、具体的にどのような効果が見え始めていますか。
一般購買においてはプロセスの無駄がほぼ完全にカットされ、総務部門が取引先とのやり取りから外れる「セルフサービス化」が実現しました。購入希望者が自分たちで発注から処理まで完結できるようになったため、総務の手配業務は大幅に削減され、納期短縮も含めて双方にメリットが生まれています。
見積購買では、すべてのやり取りがシステム上で電子化されたため、履歴の紛失がなくなり、類似の見積情報を検索して簡単に比較できるようになりました。昨今の材料価格高騰における値上がり幅の分析も容易です。さらに、紙の発注書や検収書がなくなったことで、出張先からでも社内外問わずシステム上で承認が可能になり、プロセスのロスが大幅に削減されています。
ーー 新しいシステムに対する社員の皆様の反応はいかがでしたか。
導入当初は誰しも抵抗感を持つものです。そのため、カタログ購買と見積購買でそれぞれ複数回の説明会を実施し、導入によって業務がどう変化するのかを丁寧に説明しました。また、普段からよく注文を行っている「ヘビーユーザー」の方々に先行して使ってもらい、その方々から現場へ良さを広めてもらうアプローチを取りました。この工夫が功を奏し、今ではみんな慣れてうまく使いこなしています。
ーー 運用を始めてから気づいた「想定外の効果」などはありましたか。
発注時に登録する予算ナンバーなどの基本情報を、後からシステム内で「補正」できる機能が非常に役立っています。
一般的なシステムでは、一度承認・申請されたデータは後から変更できず、金額が確定した後に経理部門が会計システム側で手作業で打ち直すなどの手間が発生します。しかしパーチェスワンクラウドでは、権限があれば正しい状態に後から戻せるため、最終的に経理部門に上がってくる情報の修正作業が激減しました。終わってみないと金額が確定しない設備購買などの領域において、経理の手戻りが減ったのは大きな想定外の効果でした。
Chapter 5これから取り組む次のテーマ
ーー 今後の展望や、次に取り組みたいテーマについて教えてください。
今後は、弊社グループ会社への展開を進めていきたいと考えています。できるだけ同じシステムに統一していく方針で動いており、機を見てパーチェスワンクラウドを展開していく予定です。また、見積購買機能の過去情報を一括集約し、一元管理をさらに進めることで、ユーザーにとってより使いやすい情報の流れを作りたいと考えています。
ーー AIやデータ活用といったDX領域についてはいかがでしょうか。
生成AI(CopilotやGeminiなど)の活用には非常に興味があり、業務のどこに使えるかを試行錯誤している段階です。
ただ、AIを本格的に活用する前段階として、まずは社内に分散しているデータの整備が必要だと認識しています。トランザクションデータをデータレイクのような形に集約し、表記の揺れを統一して価格のベンチマークができる状態を作るなど、まずはデータの基盤づくりを次のテーマとして取り組んでいきたいです。
ーー 最後に、メッセージをお願いします。
パーチェスワンクラウドを導入してから、私自身も含め物品購入が非常にスムーズになったと実感しています。現場の部門では軍手などの細々したものを大量に買う機会が多いため、今後はさらに現場へ足を運んで声を吸い上げたいと考えています。「あと一歩ここがこうなれば」という要望をパーチェスワン側へフィードバックし、一緒にシステムをより良いものへと磨き続けていければ幸いです。
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