購買管理システム導入は、全体像を整理しながら進めると検討しやすくなります
購買管理システムの導入を考え始めると、製品比較や機能一覧から確認したくなる場面は少なくありません。一方で、IPA※の要件定義ガイドでは、要件定義の前提として、背景や目的、ステークホルダ、業務プロセス、非機能要求、運用や移行の要求まで整理する重要性が示されています。購買管理システムの導入でも、まずは「何を解決したいのか」「どの業務から対象にするのか」を明確にする進め方が、社内で議論を進めるうえで参考になります。
※独立行政法人 情報処理推進機構
また、経済産業省のDX推進の手引きでは、デジタル化は単なるツール導入ではなく、経営者が目的を明確にし、自社の業務変革につなげていく取り組みとして整理されています。そのため、購買管理システムの導入も、検討初期、稟議、導入、運用・評価という流れで整理して考えると、関係者間で認識をそろえやすくなる可能性があります。
検討初期では、まず自社の課題をそろえることが出発点になります
アンケートでは、利用中の管理手法が分散している様子が見られました
3月実施アンケートでは、現在の管理手法として、自社開発/スクラッチシステム、SAPやOracleなどERPの購買モジュール、SAP AribaやCoupaなどのグローバルパッケージ、Leanerやモノタロウ等の国内ツール、Excel・メール・紙による運用など、複数の管理手法が確認されました。導入済み企業だけでなく、アナログ運用や独自運用が残る企業も見られており、購買管理の成熟度や運用形態には幅があることがうかがえます。
この結果を踏まえると、導入検討の初期段階では、機能の多さを比較する前に、自社がいまどの状態にあるのかを整理することが重要になりそうです。たとえば、申請・承認の流れを見直したいのか、購買実績の集計や分析を改善したいのか、支出統制を強めたいのかによって、優先すべき論点は変わります。
不満としては、操作性、アナログ運用、分析のしにくさが挙がっていました
アンケートでは、現在の仕組みに対する不満として、「UI/UXが悪く、現場ユーザーが使いこなせていない」「アナログすぎて人為的ミスや工数削減に限界がある」「データの抽出や分析がしにくく、経営判断に活かせない」「維持費用が高い」といった回答が複数確認されました。
これらの声からは、購買管理システムの検討では、単に機能を追加するだけでなく、現場で使いやすいこと、データを活用しやすいこと、運用負荷を増やさないことが重要な論点になりやすいと考えられます。IPAでも、ビジネスプロセスの整理や非機能要求、運用要求の定義が重要とされており、導入時には業務と運用の両面から検討する視点が参考になります。
稟議では、導入範囲と導入後の運用イメージを示すことが整理の助けになります
懸念としては、支出の見えにくさやシステム外発注が見られました
アンケートでは、支出管理やガバナンス面の懸念として、「全社の支出がリアルタイムで可視化されていない」「承認プロセスを経ない個別発注による不正やコスト増」「拠点・部門ごとにサプライヤーとの価格差がある」といった回答が複数見られました。
こうした結果からは、購買管理システムの導入は申請や発注の効率化だけでなく、支出の見える化や統制強化とも結びつけて説明するほうが、社内で目的を共有しやすい可能性があります。経済産業省の手引きでも、DXは業務改善や経営上の課題解決と結びつけて進めることが示されています。
期待効果としては、工数削減と他システム連携が目立ちました
新たな購買システムに期待する効果としては、「業務プロセスの自動化による人件費・工数削減」が多く見られました。あわせて、「他システムとのデータ連携」「購入単価の引き下げによる直接的なコスト削減」「内部統制の強化・コンプライアンスの順守」を挙げる回答も確認されました。
このため、稟議では「新しい仕組みを入れる」こと自体ではなく、どの業務をどう変えたいのか、どの指標で効果を確認したいのかまで示すと、導入後のイメージを持ちやすくなります。IPAでも、要件定義では要求の妥当性確認や運用・移行要求の定義が重視されています。
導入フェーズでは、最初から広げすぎず、使い始められる状態をつくる考え方が現実的です
操作性は、軽視しにくい論点と考えられます
アンケートでは、UI/UXや操作の簡便さについて、「最優先事項として重視する」「他の機能とのバランスを見てある程度重視する」という回答が多く見られました。必要な機能がそろっていれば操作性は問わないという回答もありましたが、全体としては、定着しやすさが検討項目になっている様子が確認できます。
IPAの要件定義ガイドでも、利用者やステークホルダを踏まえて要求を整理することが重視されています。購買管理システムでも、申請者、承認者、購買部門、情報システム部門のそれぞれにとって、日常業務で使いやすいかを確認しておくことが、導入後の運用を考えるうえで参考になります。
意思決定の壁としては、ROIと既存運用の見直しが挙がっていました
アンケートでは、購買DXを進める際の壁として、「投資対効果の算出が難しい」「既存の独自ルールや複雑な運用フローの変更が困難」「既存システムからの移行コストへの不安」といった回答が複数見られました。
そのため、導入を進める際は、最初から全領域を対象にするより、優先度の高い業務から整理し、必要な効果や確認項目を明確にしながら進めるほうが、社内調整を進めやすい場合があります。経済産業省の手引きでも、DXは自社の状況に応じて進め方を整理することが重要とされています。
運用・評価では、導入後に何を確認するかまで見ておきたいところです
情報収集段階では、資料、事例、デモへの関心が見られました
アンケートでは、導入/リプレースの状況として、「現在は情報収集を行っている段階」「時期は未定だが計画している」「1年以内に予定している」「3カ月以内に予定している」といった回答が確認されました。また、情報収集の関心点としては、「製品の特長がわかる詳細資料」「同規模他社の事例やリプレース成功実績」「実際の画面を見ながらのデモ・操作性の確認」が挙がっていました。
この結果からは、導入検討の読者にとっては、機能紹介だけでなく、自社に引き寄せて判断できる情報が求められていると考えられます。購買管理システムを比較する際も、機能表だけでなく、導入範囲、連携イメージ、現場での使い勝手、導入後に確認したい指標までセットで見ていくことが、判断材料を増やす一助になります。
まずは、自社の課題と導入範囲を整理することから始めてみませんか
3月実施アンケートでは、管理手法の多様化、アナログ運用の残存、UI/UXや分析のしにくさへの不満、支出の可視化や統制への関心、ROIや移行負担への懸念など、購買管理システムの導入検討に関わる論点が幅広く確認されました。
公的資料でも、システム導入にあたっては、背景・目的、業務プロセス、非機能要求、運用・移行、評価指標まで整理することが重要とされています。購買管理システムの導入を検討されている方は、まず自社の課題と対象範囲を明確にし、どの順番で整えていくかを整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
