はじめに
2025年12月と2026年2月に、SB C&S株式会社とディーコープ株式会社の共催で情報交換会の「ラウンドテーブル」を開催しました。今回は、5回・6回目になります。
以前のラウンドテーブルはこちらのレポートを御覧ください
・第1・2回
・第3・4回
今回のラウンドテーブルでは、多くの企業さまにご参加いただきました。
参加企業の概要
業種別の内訳では、概ね幅広い業種の企業さまにご参加いただきました。
参加者の所属部門別での比率を見ると、大部分の方が購買部門となっています。一方で情報システム部門や経営企画部門など購買改善・購買管理システム導入を進めるうえで関連する部門の方にご参加いただきました。
参加者の役職別での比率ですが、多くは課長・マネージャーの方と担当者の方が中心となります。購買管理・改善の現場で日々活躍されている方に多く参加いただきました。また、部長などより経営寄りの立ち位置の方にも参加いただき、幅広い視点を得られたと感じております。
イベントの内容と特徴的な議論
イベントは、開会挨拶の後に数社程度のグループに分かれていただき、グループごとに議論を行いました。
また、第6回については参加企業様に会場をご提供いただきました。素敵な環境の中で数社程度のグループに分かれていただき、グループごとに議論を行いました。
討議の中では、特に以下の6つのテーマについて活発な議論が交わされました。
1. メンバー育成/教育研修
― OJT偏重と体系的研修の不足: 多くの企業で明確な研修プログラムがなく現場でのOJTに依存しており、異動者・中途入社者への体系的な基礎教育の仕組みづくりが共通の課題として挙がった。
― マニュアル・eラーニング整備の進展: 専門用語集や業務マニュアルの作成、eラーニング制度の構築など、研修基盤の整備に着手し始めている企業が複数見られた。
― AIを活用した新しい育成手法: AIを交渉シミュレーションの相手として活用するなど、従来のOJTや座学にない新たな育成アプローチが試みられている。
2. 購買統制・ガバナンス施策
― 金額閾値に応じた段階的統制:金額基準に応じて購買部門の関与度や相見積取得義務を段階的に設定する運用が広く採用されている。閾値の設計がガバナンスの実効性を左右する重要な要素となっている。
― ルールの形骸化と現場定着の壁: 規程やマニュアルは存在するものの、ルール外での購買が完全には排除できていない実態が複数社で共有された。システム制御で物理的に統制を回避できない仕組みの構築が有効との認識も広がっている。
― 支出の「見える化」を起点とした改善サイクル: 全体把握が不十分という課題のもと、購買データの可視化を出発点として統制強化を段階的に進める方針が共通していた。
3. サプライヤ管理と効果測定について
― 登録制度によるサプライヤ統制: マスター未登録企業からの購入を制限する運用が広く採用されている。一方で緊急調達が多くスピード優先でチェックが十分に行えていない実情を吐露する声もあった。
― KPIに依存しない評価の視点: コスト削減額をKPIに設定せず、取引先の適正化やガバナンス強化を主目的に調達を位置付ける企業がある。予算策定段階から購買が関与し、予算どおりの執行自体を成果として評価する考え方は、購買部門の価値を上流工程で測る独自のアプローチである。
4. 価格転嫁への対応
― エビデンスベースの妥当性検証: 値上げ要請に対しては市況データや業界平均値との比較、上昇率の根拠精査など、エビデンスに基づいた妥当性判断を行う姿勢が各社に共通していた。
― 受容と代替策の組み合わせ: 値上げを一方的に拒否するのではなく、仕様の見直しや要件緩和、調達方法の変更を含めた建設的な交渉が主流となっている。中小企業庁のアンケート結果を重く受け止め原則受け入れる方針を採る企業もあった。
― 契約段階でのリスクコントロール: 値上げ率上限を設けたり、条件変更の申し出を事前に設定するなど、契約設計段階で価格変動リスクを予防する先進的な取り組みも紹介された。
5. 人員確保、増員施策
― 社内公募制度の活用が主流: 外部採用よりも社内のジョブポスティングや公募制度を通じて購買部門への異動を促す取り組みが多くの企業で共通して実施されていた。
― 間接材領域の成果の見えにくさ: 直接材と比べて事業貢献の実感が得にくく、モチベーションの源泉が見つけにくいという認識が共通していた。一方で「成果をKPIで可視化しやすい」点を逆に魅力として打ち出し、若手の成長アピールに活用する視点も示された。
6. AI活用
― 個人利用が先行し組織展開はこれから: 生成AIを契約書要約や見積比較、企画書作成に個人レベルで活用する動きが広がっているが、組織的な仕組みとしての展開はまだ途上にある企業が大半である。
― 見積書のデータ化・分析が最有力領域: PDF見積書のExcel変換、過去の見積データからの価格構成分析、AI-OCRによる仕様書の自動読み取りなど、見積業務の効率化がAI活用の最も注目される領域として各グループで議論された。
― 知識継承・属人化解消への活用: 退職者へのインタビューや会話ログをAIに学習させ、過去のサプライヤ情報や交渉実績を誰でも検索できる知識継承システムを構築した事例がある。属人化の解消とノウハウの組織的蓄積を同時に実現するアプローチとして高い関心を集めた。
総括
各社とも購買システムの導入・定着と統制強化を推進しているが、システム通過率の向上、ルール外購買の撲滅、人材の育成・確保といった課題が依然として共通して存在することが改めて浮き彫りとなった。価格転嫁への対応ではエビデンスに基づく妥当性検証が定着しつつあり、サプライヤとの関係においてもコンプライアンス意識の高まりが顕著であった。AI活用については、個人レベルでの生成AI利用が広がる一方、購買全プロセスの自動化や知識継承システムの構築など、組織的な活用で大きく先行する企業も現れており、取り組みの成熟度に明確な差が生まれつつある。今後は、購買データの可視化を起点とした段階的なガバナンス強化と、AIを活用した業務変革の両輪で、購買部門がコストセンターから戦略的な経営パートナーへと進化していく方向性が確認された。
今後の展望
今回のラウンドテーブルでは、購買統制やサプライヤ管理といった普遍的なテーマに加え、AI活用や価格転嫁対応など時勢を反映したテーマについても活発な議論が行われました。各社が共通の課題を抱える中、他社の具体的な取り組みを直接聞ける場の価値を改めて実感しております。間接材購買の領域では「どこで情報を得たら良いのか」というお声を多くいただきます。本ラウンドテーブルが、企業の垣根を越えた知見の共有と購買活動の改善につながるコミュニティとして、引き続き発展していけるよう尽力してまいります。
